仙骨矯正は万能だという過信を、患者さんから気付かされた話

カイロプラクティックの技術を応用したS.O.T(仙骨(Sacrum)・後頭骨(Occipital bone)テクニック(technique))は、幅広い症状に対処できます。

確認されている事例は、全身バランスの矯正、産後の骨盤矯正、代謝促進、免疫向上、血行の改善、脳脊髄液の改善、内蔵機能の調子を戻す、筋肉を柔軟にする etc です。

齢や性別を問わずに矯正ができる点においても優れていると思います。

 

では、「どんな症状であっても必ずよくできる万能な矯正法か」と聞かれれば、「そうではありません」と答えるしかありません。

最先端の手術でであっても、高価な薬であっても、すべての症状に対処できるわけではありません。そのような万能な代物は現実的にありえないのです。

 


今回は仙骨矯正への取組みそのものを考え直すきっかけとなった患者さんのお話です。


その患者さんは40代の女性で、ご主人が整体を受けるついでに無理やり連れてこられたそうです。

「なんで整体なのよ・・・」という感じで不機嫌でした。ただこちらとしては、一目見てご主人より体調が悪いと感じましたので、その事を説明しました。

ある程度は納得してくれたようで、仙骨矯正に興味津々になり色々と質問されました。

私は当初、「仙骨矯正をすれば必ず回復できる」と思い込んでいましたので、彼女にそのように説明していました。

今までの患者さんは仙骨矯正で症状が改善され、調子が上がっていたこともあり、「今回も正しく仙骨が矯正できれば大丈夫だ」ぐらいに考えていました。

しかし、3回目ぐらいから何とも言えない違和感を感じ始めたのです。

矯正自体は順調で、身体のバランスが整い、筋肉がほぐれやすくなっていました。

なのに、めまいや動悸が続きます。さらに微熱があり、腹痛が併発するとのことでした。好転反応という、好転前に調子が下がる働きも、予想よりも強く出すぎているように感じました。

やり方が誤っていたのかと悩み、何か良い兆候を掴もうと様々なやり方を施しました。

身のリンパ液をくまなく流すリンパアドレナージュからはじめる、内臓(当時は肝臓を重視)の調子を見直す、仙骨矯正を1回で2度行うなどなど。

それでもまったくと言っていいほど糸口が見えなかったのです。

むなしくコースの8回が過ぎてしまい、今後にどうするかを尋ねたところ、予想に反して「2週に1回ペースで継続する」とおっしゃいました。

理由は「何度か体調に手応えがあった」からだそうです。そこで、延長でお願いすることにしました。

そして、事態は急展開を迎えます。

彼女が緊急入院したのです。

その事は本人からの電話で知りました。「入院しちゃいました」と。

腹部に膿がたまり、お医者さまの判断で即入院となったそうです。

私はショックを受けたのですが、本人はゆったりと落ち着いており、「もともと胆のうが悪かった」と告白してくれました。保存療法の一つとして当方を選んでくれたそうです。

病院で治療を受け、今後は手術をしてくれる病院探しから始めるそうでした。

 

結果から考えれば、仙骨矯正で手術が必要なほどの病気を改善するのは難しく、大変可能性が低いです。それにもかかわらず、「仙骨矯正できっと改善できる」という考えから、彼女に過度の期待を抱かせてしまったかもしれません。

仙骨矯正のできること、できないことをよく考察し勉強していれば、もっと違う結果を導けたのではないかと考えています。

それでも「先生の責任ではありません」と言葉をかけてもらい、少しだけ救われた気がします。

現在は、患者さんに仙骨矯正後に起きたことや身体の変化を毎回しつこいくらい聞きますし、好転反応かそれとも他の要因で現れた症状なのかを過去の事例を合わせて考えます。

調べてみないと分からないときは、気になることから一つ一つ検証していくのです。

そうして、仙骨矯正を突きつめていき正しい情報を提供すれば、新たな仙骨矯正の可能性を引き出してくれるかもしれません。

仙骨矯正はまだ知らなようない可能性を秘めているはずだからです。

 

彼女は音楽関係者でクラシックやジャズが好きでした。当院のBGMがクラシックとジャズであり、ちょっとばかりこだわっているのは、その影響です。

コンサートにも行くようになりました。とても感謝しています。